2018.11.16ジオパーク紀行

苗場山麓ジオパーク「火山×雪」

ジオパーク紀行⑥2018Autumn②写真①

新潟県津南町・長野県栄村からなる苗場山麓ジオパークでは、火山と雪がつくりだした大地の歴史や自然との共生について学ぶことができます。

苗場山麓ジオパーク振興協議会事務局の佐藤信之さんにご案内いただきました。

 

雪と大地が育んだ湧水「龍ヶ窪」

苗場山麓には、氷期や間氷期といった気候変動と中津川の働きによってつくられた新旧10段の河岸段丘が広がっています。

今回は、中津川左岸の段丘に位置する龍ヶ窪の湧水をご紹介します。

ジオパーク紀行⑥2018Autumn①

龍ヶ窪 内山義幸 撮影

ブナやスギに覆われ、その神秘的な姿を隠すように佇む龍ヶ窪。水深が1・5mもありながら、水底がはっきりと見えるほどの透明度を誇ります。

さらに驚くことに、龍ヶ窪には、広さ1・2haの水が一日で入れ替わってしまうほどの湧水があると言われています。静かに森を映し出す水面からはとても想像しがたい湧水量です。

 

豊富な湧水はどこから?

苗場山麓は日本有数の豪雪地帯。

毎年降り積もる3〜4mもの雪は、春の訪れとともに大量の雪解け水となります。

この雪解け水や雨水が大地に浸透する過程で、水を通しにくい地層にせき止められ、豊富な湧水となるのです。

ジオパーク紀行⑥2018Autumn③②苗場溶岩層

苗場溶岩層とその下の地層の境からの湧水

苗場山麓に点在する湧水の近くでは、旧石器時代や縄文時代の遺跡が数多く発掘されています。

これは一万年以上も前から、湧水が人々の暮らしを支えてきたことを物語っています。

そして今でも、生活用水や農業用水として暮らしを支え続けているのです。

 

もっと知りたい! ジオサイト紹介

河岸段丘ってどうやってできたの?

\新旧10段の河岸段丘は、苗場山麓ならでは!/

ジオサイト苗場山麓①空撮

 

約40万年前から“隆起活動”や“氷期と間氷期の中津川の水量変化による侵食”が繰り返され、何段もの河岸段丘が形成されました。

 

毎年10月下旬には河岸段丘を舞台に日本一打ち上げ時間が短い!?花火イベントが開催されます。

闇の中の段丘を火柱で浮き上がらせる演出が見所です。

ジオサイト苗場山麓②花火

「GEO河岸段丘花火」

 

中津川左岸の岩壁は、なぜ「石落し」と呼ばれる?

\東京タワー333mとほぼ同じ高さ!/

ジオサイト苗場山麓④東京タワー

石落し(新潟県中魚沼郡津南町)

 

雪解けとともに苗場溶岩層の柱状節理が崩れ落ちることから「石落し(いしおとし)」という名がつきました。地元では、誰が落とすわけでもなく自然に落ちることから「石落ち」と呼ばれます。

 

今は崖となっていますが、中津川を挟む両岸はもともとは繋がっていました。約30万年かけて中津川が地層を削り、この景観をつくりだしたと考えられています。

 

「グリーンタフ」ってなに?

ジオサイト苗場山麓⑤グリーンタフ

露出するグリーンタフ

 

逆巻(さかさまき)の川原では、苗場山麓で一番古い地層(結東層)に“グリーンタフ”という緑色の珍しい岩石を見ることができます。グリーンタフとは、緑色凝灰岩の通称で、火山灰が固まったものや変質した玄武岩、安山岩からなります。

この地のグリーンタフは、日本海が出来始めたころの海底火山の噴出物です。

 

 

ジオが生んだ苗場山麓の名産物

1.魚沼コシヒカリの美味しさのひみつ

魚沼の気候と水と土が、美味しいお米が育つ最適条件をつくりだしています。

気候・・・魚沼のように山々に囲まれた地域は、夏の昼夜温度差が大きくなります。

昼に太陽の光でたっぷり作られたでんぷん(うまみ成分)が、夜の涼しさのおかげで、消耗されず蓄えられるのです。

②水・・・山々に降り積もった雪は、ミネラルを含んだ良質な水となり水田を潤します。夏の間も清冽な水は、稲の根に活力を与えています。

③土・・・窒素量の少ない土壌が、稲の生育を適度に抑え、稲が倒れるのを防いでいます。

 

 

2.津南の湧水ってどんな水?

津南の湧水は、雪解け水が約40 年の時を経て湧出すると考えられています。約40 年というのは、海外の湧水(硬水)と比較すると短いため、土の中のマグネシウムやカルシウムをあまり含まない軟水となります。

津南の水は超軟水に分類されるほどまろやかで、飲料水として親しまれてきました。

ジオサイト苗場山麓⑩津南の水

FamilyMartで販売されている!

また、軟水で作るパンは、海外の硬水で作るパンより柔らかくなるそうです。日本で売られているフランスパンに柔らかいものが多いのは、軟水でつくられているからかもしれません。

ジオサイト苗場山麓⑫水の特性

 

 

3.雪下にんじんは なぜ甘い?

豪雪地ならではの越冬野菜“雪下にんじん”をご存知ですか?

秋に収穫せず、3~4mもの雪の下で越冬させ、春に収穫するにんじんのことです。

雪下にんじんには0℃以下の凍りそうな状態になると、糖分を増加させ瑞々しさを保つ仕組みがあるため、果物なみの糖度になるそうです。

ジオサイト苗場山麓⑪雪下にんじん

 

 

 いま注目の「縄文文化」

縄文人は苗場山麓の湧水や川沿いに集落をつくり、狩猟や漁猟・木の実採集をしながら、それらの資源が枯渇しないように暮らしていたと考えられています。つまり、1万5千年も前に持続可能な社会を体現していたのです。

 

先人たちの知恵から“自然との共生”について私たちと一緒に学んでみませんか?

ジオサイト苗場山麓⑬縄文文化

苗場山麓ジオパーク振興協議会事務局 佐藤信之さん

 

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