2018.09.13秋野弁護士の法律相談室

地震=不可抗力という主張は通らない。擁壁施工時も法令を遵守し、充分な安全性を!

文=秋野卓生(あきの たくお)弁護士

建築業界には、地震に起因する不具合は、免責であるという認識を有している方も多くいらっしゃるのですが、地震に耐えられてこそ、建物・構造物の耐震性が確保されていることの証明ともなります。今回は、擁壁の瑕疵が東日本大震災によって判明した事案をご紹介します。(宇都宮地裁大田原支部平成24919日判決)

概要:平成23311日に発生した地震により擁壁が崩落、損傷して建物に被害が生じた案件につき、当該擁壁付きの土地の売主(A)とその代表者(B)ら、当該擁壁施工業者(C)とその代表者(D)に対して共同不法行為に基づく損害賠償請求を行った(図1

図1当事者関係図

POINT1 安かろう、悪かろうは当然許されない

本件では、被告らから、予算上の制約から充分な安全性の擁壁を造成することが

できなかった旨の主張がなされています。

しかし、「欠陥部分は擁壁の安全性に関わる重大なものであって、予算の多寡等の事情により許容される範囲を超えたものであるから、上記主張は採用することができない。」と判示され、安全性に関わる重大な工事については、予算面の制約は許されないとしています。

 

POINT2 地震=不可抗力という主張は通らない

崩落は地震による不可抗力であるという主張もなされました。

自然災害に基づく損害の場合、往々にして「不可抗力」という言葉が使用されますが、実際に不可抗力との抗弁が認められることはほとんどなく、本件でも下記のような判示がなされています。 「同地震の際の(中略)市内の震度は5強程度であったこと、一般に擁壁は建物等と比較して地震による影響を受けにくいこと、本件擁壁は築造後同地震の発生までに18 年以上を経過したものの、上記程度の期間で擁壁の安全性にかかわる程度の経年劣化が生じるとは通常考えがたく、同地震以前に何らかの劣化が生じていたことをうかがわせる証拠もないこと、本件土地近辺に存在する擁壁の中には同地震によっても特段の被害を受けていないものも多く、少なくとも、本件擁壁と同程度の条件下において法令及び技術基準を充たして施工された擁壁に同様の被害が生じたとの事実を直ちに認めるに足りる証拠はないことなどの事情を総合すれば、上記主張は採用できないというべき」

特に、周囲の擁壁はあまり影響を受けていないのに、本件擁壁のみが崩落している点が判決に際して重視されたものと考えられます。

 

POINT3 擁壁を築造・造成した土地を販売する場合、擁壁に責任を負うことも

本件の売主は、擁壁について工作物に関する確認申請書の提出その他建築基準法所定の手続を履践していませんでした。判決は、「本件擁壁の欠陥部分が重大なものであったことからすれば、A及びBが上記手続をとるべき義務を履行していれば、確認手続の中で上記欠陥部分は容易に発見されたものと考えられる」として、売主の責任を肯定しています。

 

秋野弁護士

秋野卓生(あきの たくお)弁護士

弁護士法人匠総合法律事務所代表社員弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関与している。2017年度より、慶應義塾大学法科大学院教員に就任(担当科目:法曹倫理)。管理建築士講習テキストの建築士法・その他関係法令に関する科目等の執筆をするなど、多くの執筆・著書がある。

 

 

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JHS LIBRARY 編集部

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